夜が明けた。色彩を取り戻した風景が、広がり始め。水平線と朝焼けの空の境目が、激しく蠢(うごめ)くように揺れる、朱に染まった大気が踊る!かすかに見え始めた雪を抱(いだ)いた富士山が、ぼんやりと洋上に浮かんだ!裾野が大気の屈折に飲み込まれ蜃気楼の芸術作品となって伊勢志摩にまでその神々しい姿を魅せた!
時を同じくして、これもまさにこの世の色デハナイ、すさまじい色彩を引き連れて、太陽が昇った!燃え上がる水平線で、朝陽は真っ二つにちぎれて、雲間の失せた!これもまた、真冬の大自然界のおりなす芸術に違いない。天地創造の世界を漁船が行き交い、海鳥が狂喜乱舞し、群れ、飛び交う。
すべての始まりと終わりを伊勢志摩の風景が演出する。一日(ひとひ)の終わりに静かに色彩を失ってゆくひとときに東の水平線から赤い満月が昇り、海を月光で照らし始める。背後の「残像」は、黄金の衣に身を纏い、紀伊山系の稜線の彼方へ失せた。「太陽」・・・